第5章 縁は異なもの味なもの
1度しか会ってないのに、佐助と政宗の顔はハッキリと覚えていた。政宗に至っては夢の中で会っただけなのに。長い間同じ時を共にしていたみたいに、私の記憶の中に当たり前のように入り込んでいた。
一之助さん・・・確かに佐助に似てるけど、佐助とはちょっと違う。佐助のお兄さんと言われた方がピンとくる。しかも”薫りや”という店の名前も佐助の眠りやと関係があるように思える。
ー これは絶対、何かある
私の中の誰かがそう叫んでいた。
「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」
そう一之助さんに導かれるまま、店内に用意されたカウター前の一脚の前に進むと、一之助さんが椅子を引いてくれゆっくりと腰を下ろす。
私を座らせると、一之助さんはカウンターの中に入り、相向かうように私の前に立った。
「お探しのものは、こちらですね」
いつの間に用意したのか、彼の手の先には『柴舟』と書かれた小さな木箱が用意されていた。
「なっ、なんで?!」
「さあ、なんででしょう・・・しいて言うなら、運命、ですかね」
そう言って一之助さんは、掛けていた眼鏡を中指を使い、クイッと持ち上げた。
その手の動きに合わせ、探し求めた柴舟の香りが、ふわりと私の鼻先をくすぐった。
少し前なら、『運命』なんて言葉1㎜も信じなんていなかった。ただの都合のいい言葉だと思ってた。
でも今は、あの人が、彼が、政宗がいる。
1度だけの夢だけど、でも私には政宗がいる。政宗が待っていてくれる。そうあって欲しい、そうなればいい、そう思っていた想いが確信に変わる。
ー 政宗に会える、これは運命だ