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【イケメン戦国】友の会別邸(短編集)

第1章 チェックメイトの前夜(徳川家康・こじさくコラボ)





「人騒がせなサル」
家康に言われてウリは気分を悪くしたのか腕の中から飛び降りて部屋を駆け回り始めた。
「家康、ウリちゃんに失礼だよ」
慌ててウリを追いかける私の耳に
「失礼って……サルだし」
行く宛のない言葉が聞こえてくる。すると、廊下で軋む音がしたと思った刹那、昨晩と同じよう襖に何かが触れた音がして私の足は縫い付けられたように止まる。反射的に襖に目を向ける私の髪をそよっとなびかせる勢いで通り過ぎた家康は、その勢いのまま力強く襖を開けた。

「ちょ!」
襖を開けたと思ったら慌てたような声をあげて突然尻餅をつく家康が何者かに襲われたのかと心臓が縮み上がった私の目に飛び込んできたのは、家康の顔をべろっと舐める照月だった。

「家康、大丈夫!?」
家康の元へ足を踏み出したら今度は真っ暗な廊下から音もなく黒い影が部屋に勢いよく侵入し、思わず頭に手をかざして身をすくめた私に向かってウリちゃんがうぎー!と叫びながらぶつかって、何が何やら訳の分からない切羽詰まった状況の中で今度は私が知り餅をつく羽目になった。

「あんたこそ、大丈夫」
声をかけてくれる家康を見てほっと胸をなでおろしたはいいけれど。部屋の中は小虎とさると黒い物体が飛んだり跳ねたりしてヒッチャカメッチャカの大惨事だ。
そのうち、照月に追い回されていた黒い物体が着物かけに羽を休めたところでようやく正体を確認できた。
「羽黒!」
私が名を呼ぶとちらりとこちらをみて音もなく滑空するように羽ばたいたのを照月がすかさず追いかけ、それに触発されてウリがまたもや興奮し始めて、今度は家康に向かって飛びつこうとするのを手を伸ばして捕まえようとしたのだけど……

「っ!」
「わぁっ!」

勢い余って家康を押し倒した私を踏みつけ照月は羽黒を追いかけ部屋を出て行き、ウリも廊下へ飛び出していった。
嵐が過ぎ去り静寂が訪れた部屋で、ほっと胸をなでおろす。
「なんだったの、今の……」
「あのさ、それよりも、重たいんだけど」
「あっ、ごめん」
起き上がろうと手をつくと、ぎゅ、きゅ、と廊下を軋ませる足音が近づいてきて
開きっぱなしの襖の前で足が止まった。

「ウリ、探したぞ?迷子になったらどうするんだ」
ウキッと可愛らしい声が聞こえ、どうかそのまま立ち去ってくれないかなと切に願うけれど。

「…………ん?お前たち……」


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