第5章 縁は異なもの味なもの
少し焦りながら、ドアノブを引いた瞬間。
目を刺すような、鋭い光。
踏ん張らないと飛ばされてしまいそうな位の風が吹くのを感じて。
咄嗟に、目をぎゅっと閉じる…
そして、次に目を開けた時には。
「…あれ!?う、うっそだぁ…!!」
先程まで寝ていたベッドも、部屋も。
いや、あの不思議な「眠り屋」ごと、無くなっていた。
そんな馬鹿な、と狼狽えるけれど、そこはもういつもの帰り道。
猫さんに連れてきてもらった、見知らぬ路地じゃない…
「そんな、だって、」
――何処からが、夢だったの?
猫さんに誘われて、佐助に会って、クナイが可愛くて、それから、
それから…先程の出来事を反芻して、訳もわからず立ち尽くす私を取り巻くように吹いた一陣の風が、微かにあの香りを運んできた。
ただそれだけで、まざまざと思い出される――
抱きとめられた時の柔らかさを、手首を掴まれた時の力強さを。
触れたかもしれない唇の温かさ、蒼く澄んだ瞳の鋭さも…