第5章 縁は異なもの味なもの
よろよろと、足元にいつの間にかあった荷物を抱える。
人通りの多い時間の筈なのに、人っ子一人通らない道が何故だか怖くて、大通りへと急ぐ――瞬きも忘れていた目に、じわり、と涙が滲んで、落ちた。
どんどんその勢いは増して、ぼたぼたと流れる涙。
それに加えて、嗚咽まで零れ出す。
そうして大通りまで出て、歩く人の姿を見つけた時には、もう耐えきれなかった。
これは紛れもなく、私の日常なのだと――
「う…、うわぁああんっ」
隅っこに蹲って、泣く私に。
たくさんの人々が行き交う中だけれど、誰も声をかけない。
私だって、泣いてる人がいたらきっと見て見ぬふりをしているだろう…
でも、彼だったら?
あんな短い時間を、しかも夢の中にしかいない彼の事を、
何もかも分かった様な気持ちで想像する。
…彼ならきっと、優しく力強く、抱き締めてくれるに違いない。