第5章 縁は異なもの味なもの
「ちょっ!」
ー溺れる!
ぎゅっと目を瞑ったけれど水中に沈んで行く気配がない。
「いつまでそうしてんだ?」
恐る恐る目を開くと、遠浅の水面が広がって真っ白な砂がだんだん浮かび上がって、その先に陸が見える。
政宗さんはそこへ向かって私のことなど気にする様子もなく歩いて行く。
誘ったり、従属させようとしたり、はぐらかしたり……最後に私を放ってどこに行こうっていうの!
「政宗、ムカつくぅぅぅぅぅぅ!」
一歩も引かない政宗さんの姿勢に腹立たしくなって。
思わず名を呼び、追いかけて。
彼の背中をバシンと叩いた私を
「掛かったな?」
ちょうど良い力で捕まえられて。これまた優しく微笑まれる。
「掛かってなんか……」
「素直に掛かっとけ。もっといいことしてやるから」
「怖いからっ」
ー結構です!
そう言おうと思ったのに。
「だから……俺のこと、忘れんな。
両目で見たお前を、俺は忘れない」
すぅっと顔が近づいて
唇が重なるってすぐにわかった。
結構です
イケメンの唇なんか
欲しくないから
心で思っても
体は動かなかった。