第5章 縁は異なもの味なもの
「なんだ、よそよそしいな、俺を選んでおいて」
さん、なんていらねぇよ。私の腰を支えながら彼は眼帯を外す。眼帯に隠れた目を開くと、そこには真っ青で美しい瞳があった。
「ここは、なんでも叶うんだ。俺の目も元どおりだ……」
ぽい、っと眼帯を放ると透き通る水にプカプカ浮かんで漂っている。元どおりって言われても本当がどうだったのかなんて私は知らないのに。
両方の目で私を見つめ、
「なんでも叶うのに、お前の心だけは思い通りにできねぇんだな」
そう言って腕を上げ、パチっと指を鳴らす。だけど何も起こる気配はない。なんのために鳴らしたのか皆目検討もつかない。
「政宗って呼んだら、もっといいことしてやる」
この一言に、背筋に寒気が走る。
「いいことって、初対面なのによくも平気で言えますね、すごく怪しいんですけどっ」
「いいこと、したくないのか」
誘うように艶めく視線に飲み込まれないようにするのが精一杯で。
「いいこと、って……例えば何よ」
「さぁ、なんだろうな?」
「ここに来てはぐらかすの?!」
「さ、行くぞ」
私を支えていた手をパッと離す。行くってどこに、それにここ深いのに!