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【イケメン戦国】友の会別邸(短編集)

第5章 縁は異なもの味なもの


不思議なまでの彼の真剣さと、私の冷静さ。
気恥しくて気を逸らそうと辺りを見渡すと、ぴちゃん、とまた水音。
その音が全く反響しないあたり、とても広いところにいるんだな、と分かる。
果てが見えず、遠くは霞でぼやけた、その空間。
桃色がかって見える空気と、蒼く澄んでいるのに底が見えない水面。

たまに水音が響く以外、何の音もしない。
眠る前に嗅いでいた柴舟の香りと、彼…伊達政宗さんと、私だけ。
その他は、何も無いように思える。


そこまで考えて、やっぱりどう考えてもこれは夢だな、と私は結論づけた。
匂いや感触を感じられる、酷くリアルな夢なのだ、そうに決まってる。


夢の中でこんなイケメンと出会えるなんて…最近忙しくて満足に寝れていなかった。
たまには睡眠も大事だな、なんて…夢を冒涜するような、現実味のある事を考えながら。
正面へと向き直ったその時、政宗さんがまるで私を観察するように、割と至近距離でこちらを見つめていた事に気付く。



「う、わっ…!!」
「千花!」


射抜くような視線に耐えかねて、狭い舟の上で勢いよく後ずさった私のせいで、舟は大きく音を立て傾ぐ。
大きな声で名前を呼ばれ、驚きに閉じた目を見開くと、目の前に焦ったような表情の政宗さん。
腕をぐっと掴まれ、揃って水面へとダイブする、その一部始終がまるでコマ送りのように。
一瞬一瞬が印象的に、焼き付くような感覚で、目が離せないまま…


ざぶん、と静寂を破り、水の中に落ちてからも。
そのままの勢いで水中深く、一瞬沈んでしまっても。
政宗さんに手をたぐり寄せられ、不思議と、不安も焦りも無かった。


「ぷはっ…!おい、千花!大丈夫か!?」
「はっ、はぁっ…!!けほっ」


はぁ、と大きく息を吸う。
額に貼り付いた前髪をよけてくれる、政宗さんの手。


体を支えられ、ぷかぷかと水面に浮きながら。
落ち着いてくると、気恥しさからか、高揚感からか…
自分でも理由がわからないほど、笑いがこみ上げてくるのに耐えかねて吹き出すと、政宗さんも釣られたように声を上げ笑う。


「ははっ、お前っ…狭い舟の上なんだ、気をつけろよ」
「ふふっ…!ごめんなさい、ありがとう、政宗さん」
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