第5章 縁は異なもの味なもの
ゆらゆらと心地いい揺れが続いている。
気持ちのいい香りとふんわりとした暖かさが体を包む。
ー気持ちいい・・・あ、私、寝てるのか・・・
ふんわりとした意識が、なにかに導かれるように一筋の光を目指し浮上する。
ー猫さんを追いかけて・・・佐助に会って・・・クナイがいて・・・柴舟がいい香りで・・・ベットに入って・・・
瞼を閉じたまま記憶をたどる。
思いのほか頭の中はスッキリしていた。どの位眠っているのだろう。こんなに気持ちよく眠れたのはいつ以来だろう、まだ起きたくない。
パシャン
何処かで水のはねる音がした。
ー水?でもここはベットのはず。佐助に進められ入った部屋のはず。
急に不安になり目を開けると、眩しい光が飛び込んできて慌てて手で覆う。
すると今度はいきなり影に覆われる。眩しくないと思い、手を下ろし目を開けると誰かの顔が見えた。知らない男の人が微笑んでいた。しかもかなりのイケメン。どういうことだろう?
「やっと目が覚めたか」
「えっ?誰?」
「さぁ、誰だろうな」
「・・・どちら様ですか?」
「お前が選んだんだろ」
そう言ってその男の人は、また笑った。その笑顔が眩しすぎて目をそらして、さっきの水の音の意味が理解できた。
私は蒼く澄んだ水に囲まれていた。しかもイケメンの見知らぬ男と二人、舟の上。
「・・・っ、えぇぇぇぇぇ!!」
私の絶叫が響きわたる。
周りを見渡すと、蒼い水面が何処までも広がっていた。遠くを見ようとしても、薄く霧がかかるように視界が閉ざされる。
その中に笹舟を大きくしたような形の舟が一艘。そこに私と、イケメンがいる。二人だけの世界。時おり何かが跳ねるのか何かが落ちるのか、水の音が響きわたる。
ー ああ、そうか。これは夢だ、夢なんだ。
そう思えばこの状況が受け入れられた。夢だと思えば隣のイケメンを観察する余裕も生まれる。あからさまにジロジロと隣のイケメンを見てみると、イケメンは面白そうに私の顔を見た。
右目の眼帯が目を引くけど、そんなこと気にならないくらいに澄んだ左目に引き寄せられる。姿形がカッコイイのはもちろんだけど、彼の纏う空気感さえカッコイイ。