第5章 縁は異なもの味なもの
無表情ながら彼の頬は紅潮し、時々眼鏡を直しながら実に饒舌に家康について語ってくれた。
私の知っている歴史とは違うことが多いけど、とても楽しくて彼の家康愛がビンビン伝わってくる気がした。
ピクリ
私の膝の上で寝ていた猫さんの耳が動く。どこからともなく小さな影が現れ、素早い動きで佐助の肩に駆け上った。
「えっ?あっ!?リッリス?」
「ああ、クナイおかえり。こちら俺の相棒のリスのクナイ。クナイ、こちらは千花さん」
「あ、どうも」
慌てて頭を下げた私に「チッチ」とクナイは小さく鳴いてくれた。佐助はクナイの頭を指で優しく撫でると、クナイがくわえていた蒼色の紙片を指先でつまみ上げた。
「なるほど、君はそう思うわけか」
佐助は納得したようにそう呟くと、クナイにヒマワリの種を一粒渡した。そして、身体を起こした猫さんにも煮干しを1匹渡す。
「クナイが君には音の癒しがいいと提案してきた。が、あいにく音の出るものが今は故障中でね。仕方がない、僕の子守唄でいいかな」
「はっ、はいぃ?」
「では、一曲・・・」
と、佐助が歌い出そうとした瞬間、クナイが尻尾でポサリと佐助の口を覆い、ネミョンと変な音を出し佐助の子守唄は終了となった。「みゃおん」となぜだか嬉しそうに猫さんが鳴いた。