第5章 縁は異なもの味なもの
「お疲れ様でした」
更衣室で着替えながら世間話に花を咲かせる面々に笑顔で挨拶をして足早に会社を出る。下町の工場で来る日も来る日も同じ作業をこなす、何かの歯車の一個になってかれこれ何年経っただろう。
それでも帰り道は公園へ寄ってうじゃうじゃいる鯉に餌あげたり、コンビニの店員さんがかっこよくて、わざわざ遠回りして寄ってみたり。
今日も同じことの繰り返しでも、それなりに楽しいことを見つけてる。
でもやっぱり、
「充実してる、って感じしない」
レイ=ブラックウェルの店内放送をそらで聴きながら、釣銭を渡すイケメン店員の指が触れてドキッとして。入退店のジングルに押し出されて歩き出す私は、小さなビニール袋の中身を取り出して、歩きながら蓋を開けてごくり、と乾いた喉を潤した。
「もう少し、寄り道しようかな」