第3章 ラブリーディストーションII(徳川家康)
小さく微笑む表情に力が抜けて、今にも崩れ落ちそうな私に目敏く気付いた家康は。
私の頬に触れていた手を離し、膝裏に差し入れた。
もう片方の腕は、背中へと回され。
ぐい、と力を込められて、抵抗を忘れたままの私は、簡単に抱き上げられる。
心許ない高さに彼の首に腕を回し、擦り寄ると。
家康はゆっくりと歩き、すぐそこにあったベッドに私を下ろした。
首に回した手を緩めたけれど、肩口に置かれた家康の頭はそのままで。
離れなくていいらしい、と私もそのままくっついている事にする。
家康はそのまま器用に靴を脱いだらしく、床に硬い革靴の落ちる音がした。
私もそれに倣って、無作法だけど脱いだヒールをぽい、と下に落とす。
それから二人してベッドに身を投げたけれど、寄せあった部分は少しも離れないまま。
いつも欲に任せてどちらからともなく動き出す手も、今は静かなままだ、けれど。
足にぐり、と硬いものが当たり、思わず身じろぐ私に、家康は苦笑めいたため息をついた。
「こんな雰囲気で、って俺も思うけど…生理現象だから仕方ない」
「…私は、いつも嬉しかったよ。求められる事は」
「この状況でそんな事言う?…怖いもの知らずだね」
「家康はいつだって優しかったもの、怖くなんかない」
「…ほんとに、煽り上手」