第3章 ラブリーディストーションII(徳川家康)
ぱさり、と長い睫毛が彼の肌に影を落とす。
そんな小さな変化も逃さない程に、家康から目が離せないままの自分が情けなくて、凝りもせずまた泣きそうになる…
「あんたは…いつもそう。
言葉では壁を作るくせに、そうして目で、態度で訴えてくるから、自惚れてしまう」
不意にぽつり、とこぼされた言葉の意味が分からなくて、黙ったままでいると。
家康は頬に這わせた手の親指だけをするり、と動かし私の目尻を優しく拭った。
「今だって、そうして泣きそうになってるから、これが嘘なら相当タチが悪い。
ねぇ、あんたの言う通り、俺は自力で勝ち取った。だから、」
家康はまるで緊張を紛らわしたいように、大きく息を吸って、吐いた。
「だから…違ったら、笑ってくれていいけど。
ねぇ、千花、俺のこと好きでしょ」
思いもよらない問いに目を見開き、凍りつく私に。
まるで縋り付くような弱々しい声で、やっと言えた、と…確かに、家康はそう言った。
「明日は休みだ、時間は十分にあるから、話したい…
これからの、事。
英語くらい出来るんでしょ?ビジネスパートナーでもルームメイトでも、恋人でも…あんたの好きな肩書きでいいから、着いてきて欲しい。
俺はずっと、千花の事が好きだよ」