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【イケメン戦国】友の会別邸(短編集)

第3章 ラブリーディストーションII(徳川家康)






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今日は折しも金曜日の晩。
六時を回り、先輩達が競い合うようにタイムカードを押していく。
私は自分の気持ちを誤魔化すように、わざとらしくゆっくりと退勤のカードを切った。

そして、化粧室に寄り鏡を覗く。
考え込んだせいか、顰めっ面が染み付いている気がして、眉間をぎゅっと揉みほぐす。
気持ち程度に化粧を直しながら、今日着けている下着を思い返す自分が何だか情けなくて、途中で考えるのをやめた。


社屋を出て、金曜日の夜の街を一人で歩く。
手を繋いだカップルとすれ違い、楽しげに横に広がって歩く集団に追い抜かれ。
重たい足取り、しかし止まろうなんて、ましてや引き返そうなんて選択肢は無い。
ただ、何を言われるのだろうと――恐怖と不安が、どんどん身体中にまとわりついてくる。


上へ上へと、エレベーターに運ばれながら見る馴染みの景色。
裏腹に、自分の気持ちはどんどん下降していくような感覚。
その時が迫れば迫るほど、冷静になっていく自分がいる。
ぽーん、と目的階への到着を示すチャイムが鳴って、大きく一つ深呼吸をした。


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