第3章 ラブリーディストーションII(徳川家康)
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給湯室で水を組み終わり、重たくなったポットを抱えて元来た道を戻っていく。
ポットの重みのせいか、はたまた…泥濘の中を歩くように、足取りは進まない。
こんな事では今日一日の業務に支障をきたしかねないな、と深く息を吸っては、吐き。
その繰り返しで、漸く秘書室の自分のデスクに帰りついた。
先輩達は、出た時と変わらない姿勢でゴシップを声高に叫んでいる。
有難う、と声をかけられ、おざなりに苦笑を返し。
ふと気付くと、デスクに置きっぱなしのスマホの、着信を知らせる通知ランプが点滅していた。
…ないよね、まさか、そんな事。
自分にそう言い聞かせながら、あくまでも平静を装って、アプリを立ち上げ。
そして私は、見事に裏切られる――
『いつもの場所で』