第3章 ラブリーディストーションII(徳川家康)
「それにしても、凄いぞ家康。最年少で海外赴任なんて!」
「流石は家康さんです。寂しいですが、私も見習って頑張ります!」
「…別に。たまたま選ばれただけですよ」
漏れ聞こえた会話に、ルールも何もかも消し飛んで。
ばっと振り返ると、家康は二人の同僚に挟まれ、いつもの様に気怠い表情を浮かべている。
そんな、だって。
家康は私と同年代で、まだ若いし…出世したい、なんてバリバリ自己アピールするとも思えない。海外赴任したい、なんて聞いたこともない――
「謙遜するなよ!ずっと行きたがってただろ、よくやったな」
「家康さん!寂しいですが…やっぱり寂しいですが…!
心から応援していますっ…!!」
「秀吉さん、頭撫でるのやめて下さい…
三成、鬱陶しい。まとわりつくな」
嫌がりながらも、嬉しそうに口元を緩めた家康の表情がちらり、と見えて。
それ以上見ていられなくて、踵を返す。
そうだ、そもそもそんな深い話をする間柄じゃないし、それに――
『私と一緒にいたら、好い事があると思いませんか』
あんな言葉に乗ってくる人が、出世欲が無いわけないじゃない――