第3章 変革
道中、チャージズマは今日あった面白い話やら倒したヴィランの事やらをずっと喋っていた。勿論彼の話は面白いし、彼の倒してきたヴィランにも興味がある事はあるのだが、如何せんこの先どうなるのかが分からない為生返事しか返せない。そんな私の意図を読み取ったのかは分からないが、チャージズマは歩みを止めて、半ば引きずられるようにして連れて来られた私を振り返った。
「どした?何かあった?」
不思議そうな猫目が私を見つめる。
「いえ、別に……」
「あーっ!そういや自己紹介まだだよな」
何を勘違いしたのか、私が彼の名前を知らない事が不安だと思っているチャージズマは、親指で自身を指しながら自己紹介を始めた。
「俺は上鳴電気!割と有名だから個性は知ってるだろうけど、まあよろしく!気軽に電気って呼んでくれていいぜ」
自己完結してスッキリしたのか、彼は再び私の腕を掴んで歩きだした。
出久もそうだったがこの男__電気も、一般人に気安く本名を教えて良いのだろうか。私は隔離された身の上である為口外は出来ないが、それでも危機管理能力というものがあるだろう。
「あ、そういえばさ」
私の頭一つ分上にある顔が思い出したように空を見上げた。
「お前、緑谷と何かあった?」
横目で私を見る彼の表情から明るい色は影を隠し、詮索するような、まるで一瞬の躊躇も見逃さないとでも言うかの如き疑惑が頭角を現した。純然たる疑義をぶつけてきた彼の眼は鋭く光っている。「俺の質問に嘘偽りなく答えろ」とでも言いたげは彼のそれは、テレビのインタビュアーにデレデレのものと全くの別人だった。
此処の連中は少し裏表が激しすぎやしないか、と心の中で悪態をついてはいるものの、さっきから冷や汗が止まらない。たった一言だけで場の緊張感を作る電気はヒーローとして称えられるのだろうけど、その矛先を誤っている。
「………特には」
勇気を振り絞って出した答えだが、誰が聞いても意味する所は逆であると分かってしまう回答に自分でも呆れた。掴まれている腕が寒い。
「ふーん…あっそ」
冷たく吐き捨てた彼はそれ以上深く追及してはこなかった。意外にもあっさりと元の表情へ戻った電気に戸惑いを隠せなかったが、私の腕を引く彼に黙って付いて行った。