第4章 種火
舌舐めずりをした焦凍をボヤけた視界で捉える。疲弊とは違った甘い気怠さに放心していると、彼は私の首筋を甘噛みしながら布越しに秘部へと手を伸ばした。
「んんっ……」
人差し指と中指で割れ目をなぞられれ、自分でも分かるくらい中から愛液が滲み出す。髪を乾かす時に見せた不器用さは何処へやら、女が悦ぶポイントを熟知しているかのように焦凍の手が私を翻弄する。
「っ……ぁ……」
「濡れてるぞ」
下着とズボンを一度に脱がした焦凍は、私の股の間からこちらを見てほくそ笑んだ。誰のせいでこんな事になったのか十分理解している筈なのに、彼は意地悪く私を責め立てる。
「あんっ…やぁ……!」
差し込まれた長い二本の指がバラバラに動く。戦闘の疲れで体に力が入らない私は、成す術なく与えられる快楽を甘受するしかなかった。
「やぁっ!!」
焦凍は容易に私の弱い箇所を探り当てると、ここぞとばかりに陰核も刺激しながら絶頂へと導く。私を陵辱している彼の顔はやっぱり固まっていて、それでも時折愉快そうに目が笑うのだけは分かった気がした。
____もういっそ……。
喉元まで出かかった言葉を既で飲み込むと同時に、激しい自己嫌悪が込み上げてきた。
私は今何を考えていた?
その先の言葉は何だ?
疲労とは恐ろしいもので、固い決心が弛緩する程には自身の精神を蝕んでいくらしい。置かれた状況を鑑みても、思考放棄なんて以ての外だ。抗い続けなければ。歴史が証明している様に、抵抗無くして自由なぞ到底手に入らないのだ。
「もういいだろ」
「まっ……あぁぁ!!」
必死に戦い続ける私を嘲笑うかのようにして、前戯もそこそこに焦凍がナカへ入って来た。否応なく責め立てられ、思考が分断される。頭の中を快感で埋め尽くされ、耳には肌と肌のぶつかる音と粘着質な水音しか届かない。
「なんっ…でっ……」
「…………」
唐突に私の口から漏れた疑問を受けて焦凍は固まった。繋がったまま真正面で彼を捉える。息も絶え絶えの私が拙い言葉を紡いでも、きっと彼らには届かないと思っていたのに……なぜ……。