第3章 変革
ふと、お母さんが作ってくれる卵焼きを思い出した。忙しい私達家族の朝食は大体菓子パンで、お供としてカップスープや紅茶なんかを飲む。それが私のルーティンだった。
ただ、お母さんの休日が私達子供と被った時だけちょっと贅沢な朝食になる。ホットサンドメーカーでハムとチーズのトーストを挟み、ベーコンとコーンがたっぷり入ったコンソメスープを作ってくれる。私はその時卵焼きを強請るのだが、弟は目玉焼きが好きな為決まっていつも喧嘩になった。
そんな他愛ない事で物思いに耽るくらい私の心は弱っているのかと、我ながらメンタルの弱い奴だなと、もう一人の自分が言う。
だって仕方がないじゃないか、もうこんな日々を送れることは無くなるかもしれないんだぞ、と私は反論した。反論して、その事実がどうしようもなく悲しくなった。
でも、決意したんだろう?
負けないって決めたんだろう?
だから、ヒーローデクに___緑谷出久に訴えたんだろう?
もう一人の私は微笑みながら問い掛けた。……いや、問い掛けと言うよりはもう確信に近い。そりゃそうだ。だって、私なんだから。
もう一人の私は尚も続けた。
だったら戦えばいい。
強くなって見返してやればいい。
もう誰にも脅かされないように。
決して下を向かないように。
大事なものを守れるように。