第3章 変革
「おはよう。よく眠れた?」
爽やかな笑顔で問い掛けてきた出久は、立ち上がって一歩、また一歩と私の元へやって来る。
「スマホ置いてあったの気付いたんだね。僕達の連絡先も登録してあるから、何かあったら言ってね」
彼は笑顔を貼り付けたまま歩みをとめない。危機感を感じて私も後ずさる。
「そう言えば、君のお母さんからも連絡来てたよ。電話は極力避けるように言ってあるけど、もう会話したのかな?」
私は何も答えていないのに、出久は一方的に話を進めた。
「スミレちゃんも電話は勝手にしないでね。破ったらスマホ取り上げるから」
段々と、彼の笑みが違うものになっていく。
「あ、それと……」
出久の顔が完全に別物の素顔へと移行した時、私は壁際に追い詰められていた。左右を両腕で塞いだ出久は、耳元に唇を寄せて囁く。
「今日は僕と二人だけだよ」
言うや否や、出久は私の身体を軽々と持ち上げてベッドに放り投げた。そのまま覆い被さるようにして跨られる。咄嗟に個性を発動しようと掌を彼に向けたが軽くいなされた。
「そんな悪い事をする子にはきちんと躾ないと」
「離れっ……んんっ」
突如として塞がれる唇。捩じ込まれた舌を噛みちぎってやろうと思ったが、後が怖くて何も出来ない。せめてもの抵抗に厚い胸板を押し返しても、叩いて訴えてもびくともしない。
歯列をなぞり、舌の裏側まで蹂躙され尽くした時には、酸素を求めて息をするだけで精一杯になっていた。
「まだ深いの苦手?」
首筋をちゅっと吸い上げて尋ねた出久は答えなど求めていないのだろう。その証拠に、今着たばかりのTシャツを捲り上げてもう次の愛撫を始めようとしている。ここで、私はブラジャーを付けていない事を後悔した。
「ダメだよ、女の子はちゃんと下着付けないと……こんな事されても文句言えないよ」
「っあ……」
言いながら左の突起を軽く吸われる。瞬間固くなったそこは、まるで出久の舌に踊らされるように動き、私に快楽の波を届けた。
反対側の乳房も出久の大きな手によって形を変え、時折思い出したように摘まれる飾りの刺激に腰が浮く。突っぱねていた両腕を片手で纏めてベッドに縫い付けた出久は、舌舐りをして私を見下ろした。
「まだまだこれからだよ」
満悦に、恍惚に、甘く言葉を紡ぐ口元は誰が見ても妖艶だった。