第2章 夢幻
急に動きを止めた爆心地を怪訝に思ったのか、後ろからひょっこりと顔を覗かせた烈怒頼雄斗とチャージズマ。自然とその場にいた全員の目が私に集まった訳だが、身長差故に半端ない威圧感を感じて後ずさる。そんな私を爆心地は鼻で笑った。
「ビビってんのかよ、だせぇ」
「ほぼかっちゃんのせいだろ!」
「あ゛ぁ?どーせテメェもお楽しみだったんじゃねーのかよ。俺だけのせいにしてんじゃねぇ!」
あれよあれよと言う間に喧嘩へと発展した二人は、今にも殴り合いそうな緊迫感を醸し出している。それを烈怒頼雄斗が宥め、事態は一時的に収束した。
「で、その子どーすんの?」
口火を切ったチャージズマは、私を指さしながら出久に問い掛ける。
「今はちょっと混乱してるみたいだから、取り敢えず状況の説明をしようかなって思ってるんだけど……」
「優しいな緑谷!それでこそ漢ってもんだ!」
どこら辺に漢気を感じたのか分からないが、烈怒頼雄斗は出久の本性を知ってて言っているのだろうか。一度"あの彼"と対峙してみればその異常さも分かるだろう。
「んなめんどくせぇ事する必要ねーだろ。ただ俺たちの言うこと聞いてりゃそれでいい」
「爆豪、お前本当にヒーローらしくねぇな」
「うるせぇ半分野郎!!!」
今度は標的を変えてまたも憤慨する爆心地の発想は、確かにヒーローとは思えない物騒さだ。しかし、私からしてみればそれは爆心地以外のこの場にいる全員も同じ事。一度理想を壊された者の懐疑的な目は、ただ『仲間である』というだけでその範囲を広げるのだ。
「ま、こんな事してる俺らがヒーロー語ってもいいのかって思うけどな~」
ヘラヘラと笑ったチャージズマは、大きめのソファーに腰掛けて足を組んだ。
爆心地の癇癪のせいで注目がそちらに流れていたが、改めて見回してみるとこの部屋はどうやらリビングらしい。壁に埋め込まれた大型テレビと高めのワインセラーがその豪華さを顕現している。ドアのデザインと同じくモダン調のこの部屋は、廊下のそれとは違って生活感があった。
本当にこの人達は何者でここは一体何処なのか。まだ完全に逆上せた状態から抜け出せていない頭であれこれと考えてはいるが、答えなど到底見つからない。出久が事の次第を説明してくれる気はあるようだから、これはもう思い切って聞く他ないだろう、と固く決心して目の前のヒーロー達を見据えた。