第2章 夢幻
「か、勝手にごめんね」
自身の股間を凝視して固まっている私の心を読み取ったのか、少し慌てながらヒーローデクは謝罪した。となると、この状態にしたのは彼だという事実を否応なしに認めてしまった事になる。いや、そもそもこのシチュエーションにおいて発端が彼である事は自明なのだが、どのような心境でこのような青天の霹靂を起こしたのか私には理解出来なかった。
「なんっ、はっ?……えっ?」
予期せぬアンダーケアに周章狼狽していると、それまで私の腰を支えていた腕が動き、足をM字に開かされた。閉じようと試みたが力で彼に適う訳もなく、非常に恥ずかしい状態のまま陰部を触られ、まるで感触を楽しむかのように弄ばれる。爆心地との行為で感度が高まっていたのか、私の芯はもう既に火照っていた。
「僕ね、女の子のココ、大好きなんだ」
「やめっ…ぁっ……」
双璧の膨らみをふにふにと押され、襞を引っ張られる。身じろいで横を向く私の伸びた首筋に顎を乗せ、ヒーローデクは恍惚とした声で囁いた。爆心地とは全く違う愛撫に、ウブな身体は反応する事を止められない。私の意思とは別に跳ねる下腹部は水面を揺らし、くぐもった嬌声は浴室に反響する。
「柔らかそうで、甘そうで……本当に美味しそう」
吐息混じりの言葉が私の耳を掠めた。そのまま耳朶を甘噛みされ、その中をも舌で嬲られる。真近で聞こえる湿った音に、背中を這い上がるゾクゾクとした感覚が止まらない。「だから毛って邪魔なんだよね」と耳への悪戯をやめて呟いた言葉は、先程とは打って変わってあっけらかんとしたものだった。
これが、この男が、ヒーローデクだと言うのか。何時ぞやの月刊誌の特集で、『ヒーロー業界草食キャラ番付』とかいう企画の一位に輝いたこの男が。
今のヒーローデクを見た世の女性はどう思うだろうか。普段とは違うギャップに萌えるのだろうか。私はそこはかとなく背徳感を覚えた。