第2章 夢幻
夢を見ていた。
柔和な女性の声が私に話しかけている夢を。
その声に誘われる様にして輝きの中へと進んでいく。
突如暖かい光が私の周りを包んだかと思うと、目を開けた時には湯を張った浴槽に浸かっていた。
「ん……?」
「あっ、起きた?」
ちょうど真後ろから少し高めのテノールで「よく頑張ったね」と労われる。その言葉の意図するところを理解した途端、湧き上がってきた慚愧で顔が赤くなった。先程までの行為を思い出し、更にそれを、私の腰に腕を回して股の間に座らせている男___ヒーローデクに知られてしまった事が、如何ともし難い恥ずかしさを呼び起こした。
「(何で一緒にお風呂入ってんの……?!)」
遅れて呑み込んだ状況にまたも顔が熱くなる。それが蒸気のせいなのか、はたまた出会って二回目でヒーローデクと裸の付き合いになってしまったせいなのかは置いといて、未だ訳の分からない展開が続いている事は確かである。
私の名前も個性も把握した上で襲ってきた爆心地。入れ替わる様にして現れ、事の次第を把捉しているヒーローデク。一体記憶が無い数十分前の私の身に何が起こったというのか。
「私出ますっ!」
「待って!今はまだ急に動かない方が……」
「っ……?!」
ヒーローデクの制止を振り切って立ち上がった私の腰と子宮に鈍痛が走った。筋肉痛に似たその痛みは、先程の爆心地との行為の激しさを物語っている。
ヒーローデクは痛みに顔を歪めた私の腰を優しく撫でると、ゆっくりと私を元の場所に座らせた。
「無理しないで。今は休んだほうが良いよ」
「はい……」
あの日と何一つ変わらない声色で、幼子の錯乱を鎮めるように宥められる。傍から見れば相当おかしな状態にも関わらず、私の心は徐々に落ち着きを取り戻してきた。
と同時に、股間部分の異様な軽さを感じて視線を下に落とす。するとそこには、大陰唇の毛が綺麗に全て剃られ、上部にしか陰毛が残っていない私の秘密の花園があった。