第12章 叛乱の終焉に
身体中が痛い。寝返りを打つだけで、手先から足先までの全ての関節が悲鳴を上げる。吐き気を催す程の頭痛と、水分しか受け付けない喉の痛みに抵抗するように、翠は複数の錠剤を含んで流し込んだ。
頻繁に熱を出す翠に、流石の中也も手馴れたか、簡易的なものではあるが、経口補水液が作り置いてある。最低限の栄養を取り込むように、其れを含んでから、翠は寝具に倒れこんだ。
薬のよく効く身体で良かった。小一時間で楽になった頃に眠れる筈だ。宿の外からは配下の黒服の気配がするが、彼らは絶対に玄関から此方へは入って来ようとしなかった。中也の言いつけを善く守る忠実な部下たちだ。
一歩でも宿から出れば、護衛のつもりなのだろうが、彼らは付いて来るし、話しかければ返事もある。腫物扱いが玉に瑕だが、存外大事にはされているようだ。地下室の現場に鉢合わせてから、彼らは翠自身に畏れの目を向けるようになった。一介の下級構成員の域を超えた所業と、尾崎財閥の解体起業に、翠の身の振り方を窺っているようだった。
熱が下がったら、彼らの不安も取り除かなければと、翠は気絶か睡眠か分からないような意識の手放し方をした。