第12章 叛乱の終焉に
本部に戻ってから翠に向けられた、奇異の目で見る視線の多さに、流石の中也も閉口していた。財閥の解体と再編成に伴って、疾うに隠し切れなくなった翠の素性が、正に時の人と好奇の目に晒される。
尾崎家の内乱に付随した、組織への反乱と小競り合いも相俟って、巻き込み炎上もいい所だ。中也が尾崎関連企業を下したと、形容しがたい盛り上がりを見せる諸君に、中也は罵りと大差ない言葉で否定を投げつけた。
其のあまりの語気に翠は思わず笑う。とても可笑しいと言わんばかりに口元を隠す翠に、中也は半目を向けて不服を訴えた。
「笑う所じゃねェだろ、此の元凶が!」
槍玉にあげられ、いよいよ声を上げて笑い出した翠が、怒る所でもないと、思いの丈を口にすると、中也は口を噤む。ぐぎぎと歯ぎしりをしてから翠の腕を引っ掴み、張り切りすぎた犬の散歩さながら、引き摺り回すように歩み進める。
数年前に姿を消した太宰が捕獲されたと中也の耳に入る、3分前迄の出来事だった。
to be continued in Bungo Stray Dogs.