第12章 叛乱の終焉に
夜明けと共に、中也直轄の部隊が後処理のために突入した。中也の殴り散らかした後始末には手慣れていても、地下を埋め尽くす血の海の無残な様には、息を飲む。明らかに人の所業ではない其の様子に、中也を伺う行動がちらほらと見られ、いい加減、鬱陶しいと思い始めた所で、翠が小首を傾げて、困った顔をしてみせた。
「すみません、やり過ぎました」
其の現場にあまりに似つかわしくない可憐な姿に、一瞬の静寂と注目を集めるものの、部隊の者たちは青ざめて目を逸らす。まるで腫れ物に触るように翠を扱い始めた黒服たちに、中也は盛大な溜息を吐いた。翠の手を掴み、後は任せると言い置いて、中也は彼女を連れ出す。
朝焼けの澄んだ空気を取り込み、濁った頭が冴える。今ならまだ異能の暴走として、地下の殺人は故意でないと主張できる。甘ったるい考えだと彼女を振り返った時、翠は全てを受け入れすっきりとした瞳で色の変わる空を見ていた。
中也は手を伸ばし、先ほど涙が通っていた頰を撫でて、もう大丈夫なのかと尋ねる。翠は穏やかに笑って頷いた。
「もう、決めていたことですから」