第11章 禿山の一夜
翠の異能が、中也を包んで尚、広がり続ける。
相も変わらず苛立ちで建物を張っ倒していた中也は、脳天から氷水を叩きつけられたように、静まり返った。そして、見つけたと、とても悦ばしく嗤う。
彼女の異能が中也に影響を与えるように、中也からは術者の居場所と、彼女が操る異能生命体の居場所が、手に取るように分かる。まるで互いに鈴を付けたような束縛的副作用に、舌舐めずりをした。
一足飛びに翠の元へ向かう中也の耳を、尾崎の異能生命体の遠吠えが劈く。其の声の中に、怒りをぐつぐつと煮詰め蒸留させたような濃度の感情が、燃え盛り残響していた。重力場に響き渡る憤りの声、翠の異能、其の全てが中也の異能を昂らせ、彼女が中也を呼んでいるのだと、理解する。
他人と距離を置いて、唯他人を操るだけだった女の持つ異能が、翠の精神の共有に寄って他者の異能を操るなど、皮肉なものだ。屋敷に閉じ込められて、孤独に泣いていた子どもの侭変わらず、寂しいと泣いているだけではないか。
其処で待ってろ。俺が全部、ぶッ潰してやる。