• テキストサイズ

【文豪ストレイドッグス】心の重力

第11章 禿山の一夜


苛立ちを身体に宿らせて、其の建物に降り立った。無駄に中也を引き留めて、翠を奪ったのはお前達だろうと怒りを露わに叩き潰す。先刻通された応接室はもぬけの殻で、責任者を求めて建物を彷徨う。

壁は破壊され、天井は意味を成さない程に割られ、もう既に建物は体を成さない程に崩壊していた。最早彷徨うなどという、可愛らしいものではない。一歩踏み出せば床をひび割り、手の届く限りを粉砕した。漸く見つけた人間らしき物体の胸ぐらを掴み、開き切った瞳孔で、其れを見つめる。

「知ってる事があったら全部吐け」

呻き声の中に混じり、地下という単語だけを聞き取ってから、中也は其れを投げ捨てた。

何ひとつ言わずに翠は消えた。此れも翠の手の内の範囲内だろうかと、視界に入る全てに苛立ちをぶつける。手前は太宰かと云う罵倒に辿り着いた時の腹立たしさは、極点に達していた。

怒りの矛先が見つけられずに、床ごと打ち抜いて階下に降り立つ。激しい揺れに、建物内外の人々がざわつき始めたが、其の中に翠の姿は見当たらなかった。
/ 100ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp