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【文豪ストレイドッグス】心の重力

第11章 禿山の一夜


其の日は、話を引き伸ばされ、返事を待たされ、酷く腹立たしく疲れ果てた一日だった。肥えて弛みきった責任者を名乗る男を、建物ごと叩き潰してぶち壊してやりたい気持ちを燻らせて、中也は仮宿に戻る。翠に触れて此の鬱憤を晴らしたいと、怒りを露わに帰路に着いた。

何時もなら翠は既に休んでいる時間だ。照明が消えているのは問題ないが、食事の香りがしない。規則正しい生活を心掛ける翠が、起き上がれない程に体調を崩したかと眉根を寄せて鍵を開ける。

人の気配がしない。焦って寝室の扉を開けると、整えられた寝具が静かに横たわっていた。奥歯を噛んで携帯端末を開く。昼に食材を買いに行くと連絡があった切り、連絡はない。鍵が掛かっていた所を鑑みると、恐らく其れから帰っていないと云う事か。部屋を荒らされたり、揉み合いになった形跡もない。

出入口の監視映像を確認するも、小さな手提げで外出する翠が写るのみだ。

「糞が!!!」

事態が動くと云った翠に、手前が動かすの間違いかという言葉を飲み込んだのは記憶に新しい。もう、何が腹立たしいのか分からなくなる程に頭に血を登らせて、中也は宿を飛び出した。
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