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【文豪ストレイドッグス】心の重力

第7章 心の重力


翠はまた、丸一日、眠り続けた。

何らかの不調を見落としてはいないかと、森は今一度機器を眺めた。心拍、血圧、呼吸、体温、脳波に問題はない。寧ろ以前よりも安定している。喘鳴はとうに消え、呼吸器など必要ない。確実に快方に向かっている数値と、現状の乖離に酷く違和感を感じた。

生命活動の周期として、睡魔に負けているだけであれば良いのだがと、森は嘆息する。今、彼女を喪う訳にはいかない。翠には、まだ此の世で果たす役割がある。

小さな頃から身体が弱く、昔はもっと、命の危機とは身近だった。其れ等を乗り越えて今に至るのだから、もう少しと思っても罰は当たるまい。

計測を終えた血圧計を剥がすと、翠の白く細い腕が露わになる。其処に浮かぶ赤い傷に、森は固く締めすぎたかと目を見張るが、其れを真っ向から否定しようとする主張が、彼女の袖を捲り上げる。

そして其の腕に点々と残る鬱血痕に、森は閉口した。反射的に彼女の首筋から胸元を広げると、其れと同じものが艶かしく広がっていた。

左手で額を押さえ、深いため息を吐きながら、森は翠の衣服を整える。

却説、何方を如何やって叱ったら良いかと、森は肩を落とした。
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