第6章 異能力 第七官界彷徨
能力名 第七官界彷徨。他者の異能の拡張と促進だと云う。
「夜叉の動きに合わせて強化する軸を変えるだけで、刀の軌道を簡単に移動させることができます」
然も当たり前のように、翠は説明する。
「2km圏内の感知できる異能生命体であれば、凡そ操作できるはずです。尾先狐と金色夜叉、それにエリス嬢も反応がありました。通常の異能が如何なるかは、試したことが無いので、分かりませんが、おそらく…」
胸に手を当て肯定を示す翠から、紅葉は目を逸らした。翠に惹かれていたもう一人の可能性が脳裏に浮かぶ。其れが徐々に確信となるに従って、凡ゆる思惑の交錯が顕現し始めるようだった。
隠す気もない紅葉の不穏な気配に、翠は首を傾げるも、此方の話だと一蹴する。組織の内外合わせても、其の主導権争いへの参加は片手の範囲で済む。未だ判然としない彼女の異能の正体を、末々如何するつもりなのか、紅葉では判断しかねるものだ。
報告を兼ねて首領の顔でも見に行くかと、紅葉が場を離れようとした時、予期せぬ傍受者に眉を顰めた。
「中也、立ち聞きとは関心せんのぅ…」
物陰にもたれ掛かって立つ其の人は、隠れていた訳ではないと、両手を上げた。