第5章 偽りの目
エリスを迎えに来た森の参加を以って、午後のお茶会は盛況の運びとなる。樋口が勝手に持ち出した茶菓子も、首領が同罪を被った事により無罪放免にて釈放された。
「随分とゆっくりしてしまったねぇ」
エリスを連れて上機嫌の森は、自室に戻る傍らで囁いた。思わぬ甘味に舌鼓をうち、出されるままにお茶を満喫してしまった。翠も呼んで遣れば喜んだかもしれないと笑うと、エリスは不思議がって頰に人差し指を当て、首を傾けた。なぜ彼女はこんなに香草茶について博識なのか、と。
「翠くんの家はね、宗教上、在れは駄目此れは駄目と厳しくてね。病弱なのに薬の処方も儘ならなくて、予防の為に学んだそうだよ。彼女も早く改宗したらいいのにねぇ」
カイシュウ?とエリスは眉根を寄せた。
「信仰は自由だよ。そんな心の狭い神様よりも、もっと大切にしたい神様がいたら、鞍替えしても罰は当たらないよね」
神子である翠の異能は、何も尾崎の神にだけ有効なものではない。其れを知ってか知らずか、「神々」たちは彼女に集う。翠は自分の神を選べばいいだけだ。
森は彼女の選択を思って、嗤った。