第2章 闇を食む
極適当に浴びたシャワーでも、今は汗を流せるだけ有り難かった。バスタオルを巻いて脱衣所に出るも、身体が怠く、ズルズルと座り込む。鎮痛剤の所為で飛びそうな意識を、どうにか引き止めて、膝を抱いた。
その時になってやっと、脱衣所の向こうに人の気配を感じた。翠を運び入れた者か。今の今まで気付かないとは、感覚が馬鹿になってしまっていると、額を膝に乗せた。
此の儘眠ってしまいたい欲望と格闘していると、突然無遠慮に居間へと通じる戸が開いた。そしてその向こうには、不服を顔面に貼り付ける中也が居た。
「随分と善い身分だな」
然も当然の様に脱衣所に踏み入れる中也に、翠は目を白黒させる。この場から逃れるため手をついて立ち上がろうと試みるが、その努力も虚しく、手首を捉えられ床に縫い止められた。中也は其の儘、貪り食う様に口付けを落とす。その舌先から葡萄酒の香りが漂ってきた。
激しい口付けに、翠は声を漏らす。すると中也が満足気に嗤った。
「善い声じゃねェか」
そして中也は翠の耳元に口を寄せて可愛い、と囁く。