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【文豪ストレイドッグス】心の重力

第2章 闇を食む


知らない家の香りがする。そう思いながら、翠はゆっくりと覚醒する。質の良い寝具の手触りと、冷やりとする肌寒い空気を感じ、目蓋を擦る。

夢見が酷く、身体も怠い。寝具から上半身を起こしただけで、目眩と頭痛が翠を襲う。薬を飲まなければと、鞄を探した。すると、枕元に整えられた翠の荷物と、常夜灯だけが灯る薄暗い部屋の戸の位置を確認できた。

鞄から鎮痛剤と携帯電話を引き摺り出し、戸を開ける。居間に相当するその部屋は、電灯が煌々と灯り眩しいが、そこには人ひとりいなかった。台所で薬と水を飲み下しながら、携帯電話のGPSから位置を確認する。

セーフハウスのひとつかと、導き出された位置と記憶している間取りを、頭の中で照合する。倉庫からの記憶がないが、程近いこの隠れ家まで、誰かに搬送されたかと気持ちを納得させた。

あれから随分と眠っていたようだが、まだ眠り足りない。それに身体中が汗と汚れで気分が悪くて仕方ない。周囲を見回すと、ひと通りの生活用品はありそうだと、誰もいないのを好い事に、翠はバスルームへ手を伸ばした。
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