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トッカータとフーガ(怪盗さんと刑事さん)

第4章 Interlude





「例えば、この細い腰も、手首も…力を入れてもビクともしないのも、服の下の肌の柔らかさなんかもさー。君が女の子だって証拠だよ」


刑事さんが話す声が、心臓の音の向こうで霞んで聞こえるほど。
自分の荒い息と、走る鼓動が恥ずかしくて目を閉じる。


「しかも、可愛いときてるんだから…出来たら捕まえたくないんだよね、だからこんな事やめてくんないかなー?」


軽口を叩きながらも、彼の手はそわそわと止まらない。
それが憎らしくて、でもそれ以上に、可愛いなんて軽口にどきり、とはやる自分の心臓が憎らしい。
仮面で隠れている筈なのに、可愛いだなんてと毒づいてみたところで…
自分が自分じゃ無いような感覚に、いっそ思考を手放したくなる。


その間にも、刑事さんの手は止まることなく。
年の割に育たなかった胸に、優しく包むように触れられ、またひくり、と体が震えた。


「ここも、ちゃんと女の子だ」


そうぽつり、と呟くと、刑事さんは服の裾に手をかける。
流石に何をしようとしているか察しがつき、羞恥心のあまり声を上げそうになった、その時だった。

何人かの足音が近づいてくるのに、同時に気付いたようで。
捕らえていた私の手を離し、簡単にぱぱっと身なりを整えてくれた。
そして、動かないでね、とほんの小さく囁かれる。
不思議な程の心許なさに、何故か縋りつきたくなる気持ちを堪え…そのまま暗がりに、何も出来ないまま立ち尽くす。

そんな私に、にやり、と笑いかけると。
彼はゆっくりと、街灯の当たる通りへと歩み出ていった。
そこで私も逃げればいいのに…まるでさっきの彼の言葉が呪文だったかのように、その場を去るための一歩が出ない。



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