第4章 Interlude
お仕置き、って…
その意味を問いたくても、口に出しては問えなくて。
ただ、刑事さんの手の行く先を見つめるしか出来ない。
どうしてか、抵抗するのを忘れたように動けない私の片手を、刑事さんは掴み。
頭の上まで持ち上げ、壁に固定するように押し当てる。
さらに、すっと徐ろに掲げられた空いた方の手が、私の頬の上を滑って行った。
触れるか触れないかの微妙な感覚に、身を震わせたのに気づいたのか、ほんの小さく笑い声を上げる。
それが悔しくて、こちらを真っ直ぐに、試すように見ている目を睨み返し。
同時に、捕まっていない方の手で彼の胸元を押してみるけれど、ビクともしない。
そうしている間にも、手は首筋をなぞる。
はじめに出会った、首に回された掌を思い出し。
恐怖だろうか、ぞわり、と背が粟立つ。
しかし手はさらに下りて、固定された腕の方へと曲がると、鎖骨の谷を滑り、肩の骨を辿って。
脇のあたりを素通りし、背と胸の間、脇腹へと下がっていく。
体の線が出ないようにと選んだ、ダボついた服の上からなのに、何故か鮮明にその動きが伝わってくるようで――
「やめっ…何っ…!?」
とうとう声を上げてしまった口を、繋がれていない、自由な方の手で咄嗟に塞いだ。
これでもう抵抗らしい抵抗もできない、と絶望する私をよそに、刑事さんの手はするり、と上の服をまくり、腰の骨の上あたりをふわっと掴む。
「やっぱり、女の子だねー…レディ」
レディ、と呼ばれて。
ふわふわと何処か他人事の様な思考が無理やり引きずり戻される…私は怪盗さん、で、彼は刑事さんなのだ、と。
素肌を這う手は、先程までよりぞわぞわ感を増幅させる。
こんな風に触られたことなんて無くて、気が動転してしまって。
じわじわと涙が目に溜まって来るけど、それを悟られたくなくてじっと睨み続ける。
するり、とまるでさすり上げるような動きをした手に、翻弄されるように、喉を鳴らしながら息を飲んだ。
そして、寸での所で上がりかけた声を、自らの手で留める。