第4章 Interlude
「こちらにおられましたか」
「完全に、賊を見失いました」
「うーん。俺も探してたんだけど、これ以上は埒が明かないね。総員を元の場所に集めて、今日は出直そっか」
はい、と返事よく去っていく部下らしき二人を見送ると、刑事さんは後ろ手に、明らかに私に向かってひらひらと手を振り。
自分も部下達を追って、歩き出す。
その姿が角の向こうに見えなくなったところで、膝の力が抜けてへなり、と、くずおれた。
捕まらない安堵からか、それとも、あんな行為から解放されたからか…その行為の中身まで思い出され、何故か無性に泣きたくなるのに鞭打って。
漸く物音がしなくなり、いつもの通り静まり返った街の様子を探りながら、とにかく安全な場所へと動き出す。
女だから無力なんて、女だからダメだなんて。
女だから、スラム出身だから――この世界には柵が多すぎる。
苛立ちながら彼の言葉を思い返す、けれどその間に。
あんなに自分の好き様に振る舞う、あの刑事さんにもそんな思いをする事はあるのだろうか、なんて…
時折見せる寂しげな瞳を思い出し、そんな思いがよぎる。
そしてすぐに、過ぎた考えだとかぶりを振った。
あの人と私では、生まれは愚か、生きる世界が違うのだから――
ぐるぐると、刑事さんに囚われた思考。
すっかり、それまで考えていたシンの事をアタマから追い出してしまっているのに、私自身は気付くことが無いまま…