第4章 Interlude
「立派、ね」
そんな風に小さく呟くシンは、きっと私には想像もつかないような苦悩を抱えているに違いない、と。
また黙々と、二人並んで歩き続ける…
そんな私たちの前に、先程のポスターをさらにでかでかと引き伸ばしたルミポールが現れた。
シンは私の隣、大きな大きな溜息をつく…ルミポールに貼られた、強い眼差しとは対照的な気怠い表情で。
そんな表情をさせたくなくて、私はゆっくりと口を開く――
「…立派だよ?私みたいに自分を偽らずに、正々堂々とありのままで戦ってる…だから、お願い。
そのままでいて」
シンは、モデルの仕事をしている。
中性的な容姿と涼し気な表情がウケた、だとかで色んな媒体から引っ張りだこだ。
スラム出身と言う事を隠していないから、こうして広告塔のように使われることも多い。
私は、そんなシンを尊敬している。
昔から綺麗な顔の、女の子よりも可愛らしい自慢の幼馴染が、皆に褒めそやされるのは、自分自身が褒められるよりずっと嬉しい。
彼がスカウトされた時には、心の底から応援しようと思った。
でも、それ以上に…いつかあの人の遺志を継いで賊に堕ちよう、なんて目論む私がそばに居るべきじゃないと、思った。
離れる事は許さないとばかりに、会う度に強くつよく握られる手。
もうずっと一緒にいるから、きっとこんな気持ちもお見通しに違いないのだけれど、最近それが何故か少し、怖い――
「ありがとう、」
漸く、シンがほんの少しだけ笑ってくれたのに安心しながら。
沈黙が痛くて、次の話題は、と頭を巡らす内…気付けば、見慣れた家の明かりが見えてきてほっとする。