第4章 Interlude
「…俺も行く」
「だーめ、シンはお留守番!」
もう何度目かわからない、そんなやりとりに、どちらからとも無くため息をつく。
いつも通りスラムと外の境目まで迎えに来てくれて、皆の家へと向かう道すがら。
隣を歩くシンは、むすっと頬をふくらませたままだ。
それでも、繋いだ手は解かれないまま、やり取りは平行線を辿る。
「何だって、二人がかりの方が楽だろ?だけじゃ危ない、最近警察も大量にウロウロしてるし」
「二人で行動した方が悪目立ちするでしょ?シンより私が適任だって、初めに話し合って決めたじゃない。違うやり方で、あの子たちを守っていくって!」
言い合いを続けながら歩く私たちの前に、巨大な廃ビル。
その壁一面に貼られた、スラムを解放しろ、なんて主張がデカデカと書かれたポスター。
文字の後ろに見え隠れする、真っ直ぐな瞳は、私にとってよくよく見慣れたものだ。
「だってほら、こんな所にもいっぱいいるじゃない、シン」
「…ほんとだね。の力になりたいのに、酷い足枷」
シンは大きな買い物袋を持ったまま、指先でポスターを乱暴に引き剥がした。無残に半分に破れてしまった、綺麗な顔…
「シン、足枷だなんて!立派な仕事なのにっ…」
シンは、私の声に黙ったまま。
細くて長い指が、破いた切れ端を風に流した。