第3章 【閑話休題】Trio
刑事さんにそう言ったシンは、またあの目をしている。
ひんやりと冷たく、刺さりそうな目――
思わずビクリ、と立ち止まる私に気づいて、こちらを振り向き微笑む、その目も笑っていないように見えてしまう。
「いいえ、通りすがりの事ですから。
…それより、その手。
どうされましたか?随分痛々しいですが」
刑事さんがそう言って初めて、私はシンの右手にぐるぐると巻かれた包帯に気付いた。
「本当だ…シン、どうしたの!?」
「…あぁ、これは…今朝、朝食の準備をしていてつい、ざっくりと。
でも、見た目ほど痛くないから…」
「ふふ、そうなんですね、俺はてっきり…
今朝が、ビンのゴミ回収の日だったから。
その処理中に切ってしまわれたのかな、と思いまして」
刑事さんが飲みかけの紙カップを持ったまま、すっと立ち上がった。
「じゃあ、ちゃん。
今日の珈琲も美味しかったよー」
「あ、ありがとうございました…!」