第2章 Prelude
「貴方って、変な人ですね。変わってる…警察らしくないわ」
「あー、それそれ。よく言われる!
自分では…そうは、思わないんだけどねー」
くしゃり、と目を細め。
しかし、何処か寂しそうに笑う刑事さん。
何故だろう、と考えるけれど、またすっと伸ばされる手に、条件反射の様にびくり、と肩を震わせる。
「…じゃー、またね。ちゃん」
彼の手は、優しく頭の天辺をはたき、すぐに離れていった。
そしてくるりと踵を返し、元来た道を戻っていく――アッパーの街へと向かって。
またねと言われたのに、何も返せなかった…はたかれた頭を擦りながら、内心、黒い靄が渦巻いて。
しかし当然か、とすぐに思い直す。
だって私は盗っ人で、彼は警察だ。
でも、立場の違い以前に。
私はスラムの生まれで、彼はアッパーに生きる人間だという、自分の力では覆しようのない純然たる事実――
何故こんな気持ちに囚われなきゃいけないの、と。
無闇やたらに、見えない何かに掴みかかりたくなる。
今の自分を取り巻く環境にか、生まれた国にか、
はたまた、自分自身になのか――