第1章 Overture
「昨晩も、ここ首都東京に賊が現れました。
採決後に首都銀行の金庫に格納される筈だった、時価〇万円の宝石が窃盗の被害に遭っています。
昨近連続して起こっている、窃盗事件と関連があるものとして…」
大真面目な顔で、トップニュースを報じるアナウンサー。
話し方が大袈裟で面白いけれど、賊、なんて言い方をするからチャンネルを変えてやることにする。
「どうせねぇ、こういう事件を起こすのはスラムの奴だと相場が決まってるんですよ」
変えた先では、訳知り顔のコメンテーターが、きーきーと男の割に甲高い声で。
同じ事件の事について、話していた。
「窃盗は重罪で、極刑にもなり得ます…
犯人は知っているのでしょうか」
「もし本当に、ここ最近全ての盗みが同一犯なら、被害総額は相当な物になりますね」
「スラム育ちの人間が、法など知る由もないでしょう。
旧来から何度も声高に主張してますがね、これを機に、政府はスラム人民への対策を考え直すべきでは…」