第1章 Overture
私が生まれる、三十年ほど前。
第三次世界大戦が勃発した。
日本は勝利国となり、更なる発展が約束されたかのように思われたが…
周辺国が壊滅してしまい、国内に多くの難民達が流れ着いた。
勝利国としての責務を果たすため、難民達を受け入れた日本国では犯罪が増加し。
戦前の価値観や倫理観は、脆くも崩れ去った。
富は人命よりも重くなり。
日本人の純血である事が、人としての絶対条件のようになった。
生まれによって、受けられる教育は違い。
従って、就ける職業も違う。
失敗は許されず、即座の転落を意味し。
下から上には、殆どの場合のぼれない。
そんな日本で、私は生まれた。
気付いた時には、親は無く。
物心がつき、世の中の理を知った時。
この世の全てに、絶望した――