第2章 Prelude
カフェを始めたのは、盗みに入るための資金と情報を得るため。
その為にも、せめてミドルクラスに住んでいないと…スラム出身と知れては、カフェに来るお客様も激減してしまう。
本末転倒なくらいに商売も軌道に乗ってきたけど、その収入じゃあの子達を養うなんて到底無理だ。
盗みはやめられない、あの子達の為に、自分自身が生きていく為に。
自分もそうして育てて貰ったのだから…
そして、育ててくれたあの人は――
闇に飲み込まれてしまうような感覚に囚われ、頭を振るう。
もうすぐ、路地を抜ける。
影と光の境い目。
スラムとミドルクラスの境界線。
出入りを誰かに見られては事だ、気を引き締めないと――
足音を極力潜め、辺りを窺いながら。
誰もいない通りへと、一歩、また一歩…
「ちゃん?どーしたの、こんなとこで。
…こんな時間に」
安心しきって、アパートメントへと歩き出す足がびくり、と止まる。
恐る恐る、振り向いた先…
「…刑事さん」