第2章 Prelude
「!」
「、お帰りーっ!!」
わらわらと、皆が駆け寄ってくる。
皆、親のない、スラムで独りで生きる子供だ。
一軒家を借りて、そこで身を寄せあって暮らしている。
私も育った、この家で。
「ほらほら、中に入ろ?皆、お腹すいたでしょう」
「…!」
中でも一番年少の、3歳の男の子。
だっこして、とでも言いたげに、両手を伸ばしている。
それを見て、流石のシンも渋々と言った様子で繋いでいた手を離してくれた。
ちびっ子を抱き上げ、全員を促し中に入る。
落ち着いた所で人数を数える…私とシンを合わせて、丁度十人。
人数は日によって変動する。
いない間の行方は、誰も知らない。
犯罪に手を染めている子も、きっといる。
多くを話し過ぎないのは、迷惑をかけ合わない為の暗黙のルールだった。
いつの間にか、全く姿を見せなくなる子もたまにいる。
別の居場所を見つけたのか、或いは…
いつしか誰の口からもその子の名前は出なくなり、薄れていく。
それでも、一人一人が大事で、かけがえのない存在である事に違いなくて。
親代わりとまで行かなくても、平等に愛してあげたい…
私が、そうしてもらったように。