第2章 Prelude
思いもよらない言葉に、思わずぎょっとしながらシンを見つめる。
なんてことも無い、ような顔をしているけれど。
じっと見つめ返してくる目線は、誤魔化しなんかじゃ済まさないとでも言いたげに、刺々しく映る。
「…見てた、の?」
「うん。見られたら困る事でもあった?」
「そんな訳ない!
…見てたなら、声をかけてくれれば良かったでしょ…?」
シンは何も言わず、じっとこちらを見ている。
冷たく冴え渡った瞳から、視線が刺さるような感覚に、思わず身震いした。
「ー!
あっ、シンもいるっ!おかえりなさーい!!」
そこへタイミングよく、聞きなれた声が、駆ける足音と共に近付いてくる。
安堵するなんて、どうかしてるけど…シンは確かに顔色を変え、いつも通りだ。
「迎えに来てくれたのか?有難う」
「シン、お仕事お疲れ様。
、今日の飯は!?肉!!?」
「ふふ、アラタの取ってきたリモコンのおかげで仕事も順調だから。
お肉たっぷり、よそってあげるね」
いやったぁ、と私の空いた手をとる少年――アラタは、11歳の男の子だ。
運動神経が抜群で、私の仕事を手伝いたがる。
カメラのリモコンを警備員からスってきたのは、この子。
アラタが来たからと言って、シンは私と繋いだ手を解かないまま。
逆にぎゅっと力を込めた。
痛いよ、と小さく声を上げると、こちらを見下ろし微かに微笑む――
ごくごくたまに、彼のこんな一面を怖い、と感じることがある。
そしてその度に、「家族」なのに、と思い直して、そんな気持ちをいつもしまい込む…
漸く帰りついた家の前では、アラタ以外の「家族」たちが前に立って待ち受けていた。