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神殺し事件が起き日からーー

第2章 オーケアノスの神殿


「ヒヨッコ、そんなに怯えて…どうした?」返り血だらけのアールが私の顔に手を伸ばしてきた…
怖い怖い怖い怖い…私は震えながら心の中で同じ言葉を繰り返していた、「ヒヨッコ、震えてるけど…」その言葉と同じ時に赤黒い血だらけのアールの手が私の頬に触れる…その手はとても冷たい、「おい、ヒヨッコ!」アールの声が遠のく…私の意識はあの言葉の後に途切れたーー。

「……ッコ……ヨッコ!ヒヨッコ!」アールの声がして私は目を開けた。
「若いの!大丈夫か?!」おじさんが心配そうに私の顔を覗き込むように見てきた。
「アール…おじさん…」私は声を振り絞って二人を呼んだ。「若いのはもう少し横になっているといい。」おじさんは私が起き上がろうとしているのを見て肩を抑えに来た。「……分かった…」そう言って私はまた横になった。
「ヒヨッコは血とかダメなのか?」私の横に座っているアールが聞いてきた。
「ダメとかじゃないの…ただー。」私は言いかけた言葉を呑んだ…あれ?アールの服と顔に返り血が無い…船の中にはシャワー室は愚か洗濯機もない、海で身体と服を洗った?…にしては海の潮の香りがしない…
「アール…さっきまでの返り血は…どうやって落としたの?」怯えながらも私は質問した。
「あ~〈ハルピュイア〉の返り血?ヒヨッコ気絶してたから見てないのか…」その言葉に私は首を傾げた…見ていないのか…どういう事だ…私がそう質問しようとした時だ、アールの影がアールを囲み始めたのだ…影の間からアールの肌が少しだけ見えた…
「ボクが身に付けている服は全部ボクの影から作られているからね~返り血とかは大体こんな風にやれば綺麗になるんだ~」アールが喋り終わると同時に影が元の場所へ戻った。
「アールって…影でなんでも出来るんだね…」私はアールの足元…何の変哲もない影を見ながら言葉を漏らしたー。

「アール!若いの!見えてきたぞ、〈オーケアノス〉の神殿だ!」おじさんの声で私は身体を起こし立ち上がり船の先端に歩き出した。
「アール…ここに〈オーケアノス〉はいるの?」少し不安混じりにアールに聞く。
「あぁ…こいつを殺れば後は〈ゼウス〉を含め九人になる…」アールの口元にあの不気味な笑が再び蘇る…その笑を見て私は少しゾッとしたが、アールと旅をするならこのアールの笑にも慣れなきゃ…そんな言葉が脳裏に浮かんだーー。
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