第7章 白髪赤眼
「ん…」私の意識が戻ってきた。
「おはよう。やっと目覚めたか」〈ゼウス〉が私の前に立っていた。
…そうだ、私は〈ゼウス〉に攫われて…
今までの出来事を思い出して自分の姿を見た。
私の身体は柱に縛られていた。
「これを解いてください!」私はすぐに暴れだした。
「フンッ…人間の餓鬼が…ここからはわしとあいつの最終決戦だ」〈ゼウス〉が真っ赤に燃える紅月の方を見ると黒い人の影が紅月を背後に飛んでいた。
「まさか…アール…?」私も黒い人影の方に目を向けた。
《白髪赤眼》
アール・カゲノ…現在 片目の死神。過去 両眼の"魔神"。
呪われし血を受け継ぐもの。
左眼が視力を失ったのは魔神の力が必要なくなったからである。
抉り抜いたのは魔神の力を二度と使わないように。
魔神の姿…二本の黒い顳顬から出ている角。背中からは黒い四本の翼。鋭い手足の黒爪。膝まであった髪は首まで短く。両眼は真っ赤に光り輝いている。顔、身体は全て影で覆われている。耳まで裂けた口には不気味に光る無数の牙。
死神の姿…首より下は影で覆われている。膝まである髪。左眼を前髪で隠している。右眼は真っ赤に光り輝いている。鋭い糸切り歯。優しい笑顔。楽しそうに笑ってヘラヘラとしていた。
…死神の時とは違う…あのアールの面影は全く感じれない…
私の声は恐怖で出なくなっていた。
「最後にしようじゃないか…《白髪赤眼》の化け物ぉ!」〈ゼウス〉のその叫びに反応したのかアールの眼がギロッっと私と〈ゼウス〉の方に向けられてた。