第1章 死神と会った日……
そう言えば…と私は思い「アールって神々を素手で殺しているの?」と質問した。
「ん?あ~ボク一応武器は持ってるんだよ?」と私に答えてくれた。
「どんな武器?やっぱり死神だから鎌とか?」とまたアールに質問をした。
「あ~ちょっと待ってね」そう言ってアールは自分の足元を見た…いや、違う。自分の影を見たんだ!
その影はアールの形をしていた。でも、私がほんの一瞬、瞬きをした時だ、アールは動いていないのに影だけが形を変えていた…その形を変えた影からは、アールが今まで身に付けていたマントと仮面…その二つと一緒にアールの武器が影から姿を現した…その武器の色は乾いた血の様に赤黒く不気味に光った様に見えた。
「君がさっき言った通り…ボクのは鎌だよ!」鎌だけを手に取りマントと仮面を影にしまい更にこう言った…
「これは神しか扱えない武器言わば~《神器》だね!ボクのは〈タナトス、死の神〉から盗んだ《神器》だね~」と私に言った。
〈タナトス、死の神…ニュクス(夜)の息子でヒュプノス(眠り)の兄弟。抽象的な存在で、古くはその容姿や性格は希薄であった。ただ、『神統記』では、鉄の心臓と青銅の心を持つ非情の神で、ヒュプノスと共に大地の遥か下方のタルタロスの領域に館を構えているという。〉
私の頭にそんな神話が流れた…〈タナトス〉から盗んだ…かなり勇気のいる事だ…アールはやはり…人間じゃない。
走行しているうちに私とアールは港に着いた。
「おっちゃ~ん!居るか~?」アールが誰かを探しに港近くの家に入っていった…それを見送ると私は港に停めてある船の方に歩き出した。
この船…ちょっとボロいな~そんな事を思いながら船に手を伸ばしかけた時だ、「こら!」誰かが私に怒鳴ってきた、ハッとして声のした方に身体を向けるとそこに立っていたのは漁師の格好をしたおじさんだ。
「ご、ごめんなさい!」慌てて私はそのおじさんに頭を下げた。「俺様の船に触るんじゃねぇ!」怖い声で私にそう言った。
「ん?あ、おっちゃんどこに居たんだよ~」アールの声がして私は顔を上げた。「お!アールじゃねぇかい!元気けい?」おじさんはアールを見るなり握手してそう言った。「あ~おっちゃんこそ、元気?」アールが聞く「あ~見ての通りじゃい!」肩を回しながら答えた。
「あ、おっちゃんボクの同行者叱ってたよね?」アールがハッとしておじさんに聞いた。