第6章 虎の少年
ーー中島敦、故あって餓死寸前です。
孤児院を追い出され、食べるものも、寝るところもなくこんな処まで来てしまった。
生きたければ奪うしかない…けど…
生きる為だ。次に通りかかった者、そいつを襲い…財布を奪う
上下無地の服で少し小汚い少年、敦はとある河原に来ていた。
一文無しの為、財布を奪う心算だ。
(…気配!)
敦の目線の先には河を流れる脚…人間が見えた。
(これはノーカンで…!)
目を逸らそうとしたその時
「あーー!いた!治ちゃーーん!」
敦の横から一人の少女が現れた。
白いパーカーの上に黒のジャケットを羽織り、下は蒼色のスカートを履いていた。
「国木田君が探してるよー!ッもう!」
少女は敦に目もくれずジャケットとパーカーを脱いだ。敦は思わず目を逸らすが、少女はパーカーの下にキャミソールを着用していた。少女はそのまま河に飛び込んで行った。
「きゃっ!一寸流れ速くない!?
…あっ!滑っ!きゃぁぁあああああ!」
(ぇぇぇえええええ!?)
飛び込んだ少女も一緒に流されて行く。
敦は思わず河へ飛び込んだ。