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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第5章 【SS】武装探偵社入社試験


其処には私が立っていた。
否、私によく似た人物が立っていた。

「……葉月」

何の反応も示さない葉月。

だが、何かを伝えようと口をパクパクさせ始めた。

「何言ってるの?」

何度も、何度も、同じ言葉を繰り返している。

近付こうと一歩踏み出した時、私は目を覚ました。




「葉琉。気がついたかい?」

「……治ちゃん?」

頭がぼーっとしている。
あれ、私何故此処に…。

私は勢い良く起き上がった。

「子供達は!?爆弾は!?あの医師は!?」

急いで辺りを見回す。

「大丈夫。
阿部医師は建物から出て来た所を
国木田君が抑えたよ。
子供達は君が守った。
爆発のあと、建物が崩れたんだ。
だけど一箇所だけ、数本の氷の柱に支えられる様に
残った場所があった」

私は目を見開いた。

「まさか…でもあれは!
何度も何度もやったけど
一度も出来なかった!」

「私も初めは驚いたさ。
でも、あの場であの力を使えるのは
葉琉しか居なかったのだよ」

私は言葉に詰まった。
先刻、夢で出会った葉月は
私を助けに来てくれた……?
葉月は…
すると、夢の中で口をパクパクさせている光景を思い出した。

『幸せになって』

微笑みながら、何度も何度も言っていた言葉。

気がつくと私は泣いていた。

「葉琉…」

治ちゃんは優しく頭を撫でてくれた。

「治ちゃん」

「なんだい?」

「葉月が助けてくれたの」

「うん」

「幸せになってって言ってた」

「うん」

「あの時の葉月は…」

私は最後に葉月に会った
二年前を思い出した。

「葉月は、演じてたんだ。
私が葉月を置いていける様に。
葉月にも大切なものがあって
それが彼処にあって
葉月は…私が違う道を選べる様に
悪者になってくれたんだ…」

治ちゃんはゆっくりと私を抱きしめた。

「葉琉。葉月ちゃんの事が判って
私と一緒に来た事後悔しているかい?」

私は首を横に振った。

「葉月にも大切なものがあった様に
私も守りたい物があったから
いま、此処にいるんだよ。
後悔なんてしてないよ」

「……此れからも私と一緒にいてくれるかい?」

治ちゃんの手に少し力が籠った。
私も治ちゃんの背中に手を回した。

「私は、治ちゃんと一緒にいるよ」

治ちゃんはゆっくりと離れて笑っていた。
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